かつては2兆円もの利益を上げたGMACは、約2兆円もビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?の損失を出すに至った。
実をいうと、GM経営破綻の一番大きな原因はそこにあったのだ。
GMACは、GMの利益にものすごく貢献した時期もあった。
そして、GMACがうんと儲けてくれればGMの株価が上がるから、クルマの販売自体ではそれほど儲かっていなくても、その時期の経営者は、高い評価を得られたのである。
そういう経営をやっていたことが、一番の大問題だと思われる。
もっともトヨタでも、セールス・ファイナンスで一時期はかなり儲けていたので、似たようなことがないとはいえないが、さすがにトヨタの場合は、キャッシュフローを何に使ったかというと、先行開発投資や工場の増設など、ちゃんとした実体経済に向けてカネを使い、その一方で株主に対する配当は抑えていた。
だからGM株のように、上がる時は上がるが、下がる時には急落するという、そういうことはなかったのである。
ただしトヨタ株も、日経平均や為替レート、短期利益のために値下がりすることがあるのはいうまでもない。
こうして、GMがGMACだけで2兆円の大損失を出す結果となった一方で、逆にトヨタは着々と利益を出し、もちろん金融収益もあるが、それ以外にクルマの販売でもしっかり儲けて、いつの間にか3兆円以上の内部留保を蓄積させてきたのである。
今はそれが、売掛債権を除いても、4兆円近くに達しているともいわれている。
ただ、その蓄積も今回の業績落ち込みで、半分ぐらいは減少しているのではないか。
しかし、今から10年前は、そのあたりの水準からスタートしていたわけだから、「もう1回スタートラインに逆戻りし、出直す」のが、今後の課題だと思われる。
GMがダメになった決定的要因「技術はよそから買えばいい」また、トヨタや日本の自動車メーカーの場合には、これからは環境技術が大事だということで、先行開発投資をかなり重視している。
もちろん、これについては大手メーカーと中堅メーカーの間では多少は違うが、極端な短期利益志向に走ることは全くしていない。
アメリカと日本の自動車メーカー間において、その点の違いは大きいと思われる。
さらに90年代には、石油が安価で、かつ供給が安定していたし、加えてアメリカには世界中からカネが集まって、過剰消費を後押しするムードになっていたから、アメリカの消費者も骨、それに乗せられてしまって、大型SUVが面白いほど売れ自動車メーカーは儲かった。
そのためGM、あるいはフォードなどは、SUVなどに経営資源を集中し過ぎてしまったのだ。
自動車産業の技術の基本というのは、乗用車の技術である。
やはり乗用車が競争も一番激しいし、同時になかなか難しいといえば難しい分野なのである。
ところが、アメリカのビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?自動車メーカーは、その乗用車の開発に手を抜いた。
「乗用車の手を抜く」ということは何を意味するかというと、エンジンの改良・進化というのが止まってしまうことになる。
大型SUVでは、同じフレーム・シャーシを何代かにわたって使える。
モデルチェンジを頻繁に繰り返す乗用車とは、そこがまったく違う。
例えば、クルマの車台であるプラットフォームというのは、ロボット技術との関連もあって日進月歩である。
軽く丈夫にし、なおかついろいろな先端技術を取り入れた設計となる。
しかも、そのモデルチェンジは非常に短いサイクルとなることが多い。
従ってエンジンと並んで、日進月歩の進歩を遂げていく。
だから、1台当たりの利益は、乗用車よりも大型SUVの方がはるかに大きいのだが、その利益の源泉について見てみると技術の進歩は余り関係ない。
同じエンジンを、何代にもわたって使っていることが多い。
さらに車台は、昔と同じようなフレーム・シャーシを使っておけばいい、ということにもなりやすい。
アメリカの大量生産型の工場には、これが非常に向いている。
そのような事情があって、ある時期、GMやフォードはポロ儲けができたのだ。
それに対して日本の自動車メーカーは、乗用車にこだわって、プラットフォームにおけるいろいろな進化、それからエンジンのコンパクト化、エンジンの燃費効率向上への取り組みを続けてきた。
それによって、技術が年々進化していった。
一方、アメリカの自動車メーカーは、いってみれば、すぐ儲かるような大型SUVには力を入れたが、それ以外のものについては手を抜いてしまったのだ。
端的な例を挙げると、この約20年間にわたって、ビッグスリーからは乗用車に関して、ヒット商品がひとつも出ていなかった。
フォードの「トーラス」が発売されたのが85年で、これは大ヒットしたが、それ以降はビッグスリーからは、成功した乗用車はほとんど出ていなかった。
エンジンは、今も昔のままといってもいいだろう。
それからもう1つは、やはり環境技術の軽視ということも挙げられると思われる。
結局、ビッグスリーの経営者は、「環境技術という、そんな厄介なものはあんまりやりたくない。
カネがかかるぽっかりだ。
カネをかければ、株価は上がらない」という発想しかなかったといわれてもしかたがないと思われる。
また、もう1つ極端な例を挙げるとアメリカは、排ガス規制についても世界に先駆けてマスキー法を作ったが、共和党政権が長期にわたって続いたため、1974年にいったん廃案となった後、実質25年間も繰り延べさせてしまった。
これに対して、日本の政府をはじめ自動車メーカーは、当時、本当はやりたくなかったのだが、アメリカへの輸出と国内世論のこともあり、マスキー法をそのまま受け入れた(この点についてはで詳しくビッグスリーはなぜ急激に崩壊したか?述べる)。
今後、新興国、とくに中国のようなところでクルマを大量に作っていくためには、いずれこの環境技術が勝負を決することになるだろう。
中国市場で自動車の量的拡大が進めば、排ガス公害という問題だけでなく、C02の排出量もとんでもない数値になってしまいかねない。
また、中国は化石燃料である石油の膨大な消費国になりつつある。
このまま放っておくと、中国はいくら世界に冠たる外貨保有国といっていても、あと10年、20年経つと、行き詰まりに直面することを余儀なくされると思われる。
つまり、自動車をやたらと増やした場合、中国自身のいろいろな財政事情にまで、影響を及ぼす可能性があるのだ。
日本の自動車メーカーは、環境技術を、事前にしっかりと準備しておく必要性について、一貫して考えてきた。
かつては社会の要請があるから、その世論に押されてしかたなくやっていた時代もあったが、最近では「環境技術をこれからの自分の会社の謳い文句にしよう」といった具合に、前向きな姿勢で手を打つようになっている。
ところがビッグスリーは、それを軽祝したのである。
彼らは、「環境技術というのは、1世紀のうちに何回かしか起こらないようなイノベーションによるしかない」という考え方だった。
つまり、「そんなことは、ベンチャー企業にやらせればいい。
そういうベンチ由ヤー企業に出資するか、あるいはいい技術が出てくれば、それを買えばいい」という考え方であった。
また環境対策車に必要な燃料電池についても、「カナダにバラード社というベンチャー企業があって、そこがやってくれるだろう。

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